2020年6月10日水曜日

M5StickVでSemantic Segmentationやってみた(2)





久しぶりに研究室に顔を出しに行ったら,次の日筋肉痛になった中の人です.前回に引き続き,M5StickV(K210)にSemantic Segmentationを入れる話です.



1.使えそうで使えないレイヤ



前回示したように,使えるレイヤを守ればKeras->TFLite->NNCaseの変換は可能です.しかし,Softmaxレイヤ(Activation("softmax")も同様)に関しては動作しませんでした.
公式がBBS等で配布しているデータだと,Softmaxを使っているモデルもあるのでそこから類推するに,画像のような2D(実際はチャンネル方向があるので3D)データは動かず,全結合層の出力のように1Dのデータのみ動くようになっていると考えられます.この問題はBeta3, Beta4で確認したのですが,そのうちだれかがIssue上げてくれないかなって思っています(そこまで手が回らない).

2.Softmaxを回避する


こうなるとSoftmaxを使わずにモデルを構築したいわけですが,トレーニング時にはこのレイヤがないと正しく収束しないことがほとんどだったので,結局必要になります.
回避方法としてはいくつか存在して,

  1. tensorflowの損失関数でSoftmaxが含まれているものを使う
  2. Softmaxありで学習したモデルからSoftmaxを取り除く

あたりが主な方法になりそうです.1のやり方は,Tensorflow 1.x系だと存在したのですが,2.x系で廃止されたようです(tf.compat.v1には残されているので,厳密には存在している).
2.xの書き方になるべくしたいと考えているので,今回は2のやり方で回避しました.

モデル分割のやり方はここを見てほしいです.元のモデルをロードして,分割したものを新しいモデルとして生成しなおす方式をとっています.

3.モデルのトレーニング  


今回はVOC2012をベースに,人,椅子+ソファー,テーブル,人,TVの5分類としました.画像サイズも入力が32x32x3,出力が32x32x5となるように変更し,データ生成時には左右を反転した画像も追加するようにしました(実際はじょうげ反転も入れたほうが良い).
誤差関数はCategorogicalCrossentropyの結果にピクセルの出現回数に合わせた係数を掛け合わせています.

4.トレーニング結果

input
Ground Truth

Output(Before Pruning)
Output(After Pruning)
こんな感じになりました(この入力画像はトレーニングに使用していない).
枝刈りをやってみたのですが,ファイルサイズなどはそこまで変わった気がしていません.クラス分類でArgmaxを取って結果を出すので,Softmaxは取り除いても影響は全くありません.
そこそこ動きそうだったのでNNCaseでコンパイルしました.NNCaseでのコンパイルの際はtfliteの量子化されていない版を使用しましょう.量子化はNNCaseで勝手にやります.

5.NNCase


NNCaseではここを参考にしてコンパイルをしました.オプション等が変わっているので,注意が必要です.


.\ncc.exe compile Model_V0_1.tflite Model_V0_1.kmodel -i tflite -o kmodel --dataset ./data/JPEGImages_Sample/ --dataset-format image --inference-type uint8 --input-mean 0 --input-std 1 --dump-ir --input-type uint8 --max-allocator-solve-secs 120 --calibrate-method l2 --dump-weights-range --weights-quantize-threshold 128 --output-quantize-threshold 256


パラメータの量子化のためにデータセットのサンプルを準備することや,quantizeのためのオプションの値の設定があります.この辺はモデルと出力結果を眺めつつ変えていけばいいと思います.
このコンパイル作業は非常に長いので(3-40min, XPS 9360 i5モデル),気長に待ちます.この時の出力結果にモデルのサイズが出るので,KPUのメモリに載るかを確認しておきましょう.大きい場合は,元モデルの構造を変えることなどで修正しましょう.

6.次回予告


NNCaseでのコンパイルが終わったので,実機確認編です.





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2020年6月1日月曜日

M5StickVでSemantic Segmentationやってみた(1)



インターンの日程と授業日程がことごとく合わない中の人です.
今回はやるやる詐欺で延期していたM5StickV(K210)でSemantic Segmentationの話です.
メモリサイズとか、ネットワークが実行できないとか色々あったのでその辺の話もしていけたらと思います.



1.Semantic Segmenationとは


こんな感じのヤツ.https://mc.ai/semantic-segmentation-for-dummies/より

Semantic Segmentationはピクセル単位でクラス分類を行うタスクで,自動運転などの例でよく出てくるあれです.普通のクラス分類と比べ出力のサイズが大きくなりやすい傾向があります.Instance Segmentationはこれの親戚にあたる.

2.モデルの構築


Semantic Segmentationのモデルはいろいろ提案されています.速度重視のものだとENet,ICNet,ESPNetなどがあります。とはいえ論文中だと速度計測用のデバイスがRTX2080やTitanといった普通のGPUになっていることが多く,そのままでは到底K210では使えません。
そこで今回は泣く泣く独自にモデルを設計することから始めます。

3.KPUのメモリとモデルの制約


K210のKPUを使う場合,メモリの制約を気にする必要があります.

参考:kmodel v4 tips

特に入出力用のメモリは2MBなので、画像サイズを気にしないとサイズオーバーで動かなくなります。(NNCaseでのコンパイルはサイズオーバーでも通ってしまい、実機に突っ込んで初めて気がつくなんてことがありました)
今回は32x32x3の入力で32x32x5の出力にしました。もう少し大きくても動きそうな
印象です。
パラメータの方はまだ余裕がありそうなので、もう少し深いモデルでも動きそうです.(今回の場合では50%程度しか使っていない)

4.NNCaseが対応するレイヤ


NNCaseで使えるTFLiteのレイヤには制限があり,kerasで作ったモデルが使えないなんてこともあります.

参考:tflite_ops.md

netronなどで,TFLiteに変換したモデルを確認するといいでしょう.
実はTFLite以外にもONNXとCaffeにも対応しています.こちらも対応表があるので,使う場合には参考にしましょう.

5.自作したモデル


モデル全体図.サイズ違いの同じ画像の入力を渡すようにしている.

今回作成したモデルはサイズ違いの入力を持つ構成にしました.各ブロックの中身はこんな感じ.

ブロック部分.フィルタサイズを変えている.

MixConvもどきです.高速化の観点からだとKPUがダイレクトに走らせられるようにカーネルサイズを3x3にしたいのですが,無理やり3x3を2回走らせるよりはマシってことで5x5カーネルを使用しています.
元の入力が32x32の時点でここまで小さくする必要はないのですが,何となくやってます.実は,KPUの仕様的にはあと1回ぐらいはサイズを落とせる(4x4)ようなのですが,そこまで落としても意味が無さそうなのでやっていません.

6.次回予告


次回もモデルの解説をうだうだやりつつ,NNCase v0.2.0 Beta4を使った実装の方もやっていきたいと思います.



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2020年5月30日土曜日

iPad Pro買ってみた




在宅作業が始まる前よりも、忙しくなっている中の人です。在宅作業であったら便利かなと思いタブレットを買ったのですが、使い始めてから1週間ぐらい使ってみたのでそのレビューをしてみようと思います。



1.購入までの経緯


こんな感じの奴を見たかった

そもそもなんで買ったのかって話ですが,
  • 在宅でバイト・授業を受けるので,資料がPDFなどの電子データで来る
  • 家のPCにつないでる画面は1枚だけなので,PDF+ビデオ会議見たいのなことはしにくい
  • PDFに書き込みたい
ってあたりを前々から考えており,実験TAのレポート確認がPDFになることが確定したことがダメ押しになった感じです.

2.機種選定


お値段約12万円(学割適応済み)

今回はiPad Pro 11inch 128GB Wi-fiのみを選びました.いわゆる最安の奴なんですが,
  • iPhone XRの運用経験から,容量は64GBあれば足りそう
  • 出先ではiPhoneのテザリングを使うので,cellularはいらない
  • 画面サイズはPDF読む程度なら11inchで足りる
  • ぬるぬる動いてほしい
  • ビデオ通話もやりたい
ってあたりを判断した結果,iPad Proの最安モデルになりました.

3.使ってみた感想  


汚い画面だ.

買って2週間ぐらいたったわけなんですが,そこそこ好印象でした.
画面が大きくなった恩恵が想像以上に大きく,
  • PCでサイトを読むよりも一度に見れる情報量が多い上,スマホより文字が大きく出来る.
  • ペンでかける範囲が大きいのでメモとかが取りやすい.
ってあたりが良かったです.縦置きディスプレーの印象に近い感じです.

4.その他


扉にくっつく.

元々iPhone XRを使っていたのですが,初期設定の際にアカウントデータとかをbluetoothで勝手に引き継いでくれる機能が良かったです.
バッテリーもそこそこ持ち,Zoom8h耐久とかやっても100%->20%と耐えてくれました.
ケースは純正の奴を買ったのですが,磁力があまりにも強いので鉄の扉とかにiPadごと貼り付けられます.結構便利です.





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2020年5月12日火曜日

VSCodeでDraw.ioが使えるExtensionが出たので試してみた


 就活が始まり、慌ててRustやり始めた中の人です。さて今回はVSCode向けにDraw.ioのExtensionが出たのでを使ってみた話です。中の人は結構Draw.ioとVSCodeを使うこともあり、非常にありがたい話です。

開発者(@hediet_dev)の元ツイート https://twitter.com/hediet_dev/status/1259214515683590144?s=20


2020/5/17追記:v0.4.0におけるExport機能についてを追記


1.インストール

"draw"まで打ち込んだら、出てきた

ExtensionsでDraw.ioって打つと"Draw.io Integration"が一番上に出てくるので、それをインストールするだけ。超絶簡単。

マーケットプレイス
https://marketplace.visualstudio.com/items?itemName=hediet.vscode-drawio

2.使ってみる


使ってみた様子。数式も使えれば、矢印もオートでつながる。

使い勝手は、Draw.ioのオフラインエディタに近い感じです。PNGなどの画像出力とか、数式組版とかもそのまま使えます。(数式組版使ったやつをPNGとかJPGとかで吐き出すと、組版の表示が元に戻るみたい)

先ほどのやつをPNGで吐き出した。数式組版が戻る。

今のところ(2020/05/12現在)、PNGなどできれいな数式を入れたい場合は、VSCodeで編集した.drawioファイルをオンラインのDraw.ioに上げてエクスポートしてあげる必要があるみたいです。

2020/5/17追記:

v0.4.0のChange Log.

バージョン0.4.0がリリースされ,Export機能が削除されたようです.
(Removes export options as they did not work.)
もしExportを使いたい場合は,0.3.0にダウングレードして使うか,Draw.ioに編集した.drawioファイルを上げて,Exportしましょう.

3.その他


GitHubにリポジトリが転がってたよ。PDF吐き出せないとかがissueに上がってるみたいです。(2020/05/12現在)



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2020年5月10日日曜日

素人でもわかる!"回 路 設 計"におけるリスケジューリング



今まで作った基板たち。圧倒的な青率

 家籠り生活1か月目、ついに手が滑ってiPad Pro 11inchを買ってしまった中の人です。
約1か月振りの投稿です。
 回路設計におけるリスケジューリングって題名ですが、予定通りに進まず、締め切り駆動開発になった話です。




1.回路設計の始まり


作った回路。ふぇぇぇぇ

メカの開発に四苦八苦していたのは前回話しましたが、実はこの裏で回路設計を始めていました。使ってみたいセンサやマイコンのテストを2019/12-2020/01初頭にかけてやりつつ卒論を書きつつ卒研発表準備みたいなことをしていたので、夜の研究室で一人発狂していました(メタなことを話せば、この時期のブログ投稿はすべてこのための準備)。
 なんだかんだコノ辺までは計画通りで、旧正月前には基板が届くようなスケジュールで動くことができていました。

2.発注期限は旧正月前


別基板にして配線するので、未配線の部分が残っている

 とりあえず仕様が決まったので、回路設計を始めました。いろいろな機能を載せようとた結果、再設計を何回もする羽目に...。想像以上にESP32のアンテナ周りの制約がきつく、メカ側の設計にも影響が出ました。この一件で進捗が大幅に遅れました。
 こんな感じで設計を進めていたところ、TLにコロナの話題がちらほらと流れてきました。旧正月は織り込み済みだったのですが、想定外だったのがコロナです。しかも深センあたりも封鎖するみたいな話が流れてきたので、急ピッチで設計を進めました。
 結果、メールを受け取ってくれる最終日に何とか発注を終え一安心...と思ったのですが、結局業者の方が旧正月後も動けず(当たり前ですが)、基板発注から1か月後に到着しました。当初の予定から1か月遅れです。

3.遅れた原因を振り返る


当時のツイート。

 今振り返ってみると、"同時に走らせるタスクが多すぎてキャパオーバーした"ことと、"どこかで詰まることは予想していたが、バッファの見積もりも甘く、時間が足りなかった"のが原因だったと思います。まあ趣味でやってるものなので学業優先が基本なのですが。



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2020年4月14日火曜日

0からごみを生み出す!素人機械設計 入門




 サークルの新歓っていつなのかわからない中の人です。今回はメカ設計未経験のド素人が、トイラジコンの設計をする話です。



1.サイズを決めよう!


作りたいサイズは道路が基準。
Jet何某が2車線使っているので、対抗して1車線分で作成。

 何を作るかは決めたので、最初はメカの設計から始めました。手元にあったレゴの道路プレート(廃盤、代替品が出てる)の1車線分を基準にサイズを決めました(50mmx95mm、車軸間62.5mm)。このサイズが後々悲劇を生むわけなのですが。

2.大まかに設計しよう!


設計の参考にしたMINI-Z AWD MA-010。
4輪駆動、ギヤデフ、4輪独立サスなどロマンもりもり。
これの最新版がMA-030で、FF版のMA-03Fがベース。

盛り込みたい機能は決まっているので、実際のラジコンを参考に設計をはじめました。参考にしたラジコンは目標サイズより一回り大きいので、各部分をスケールダウンしながら、違う設計に変えていく必要がありました(丸パクリはできないからね)。
 うだうだ設計を進めつつ(実は基板と並行して設計)、2月中頃には最初の設計が終了しました。

3.条件をよく見よう...


DMMのAgiristaは初めて使った。
最小厚み等で3Dプリント担当者には相当ご迷惑をおかけしました。

 今回はAgiristaやMJFの精度を見極めたかったので、アクリルUltraの使用は最小限にして、AgiristaやMJFを多用することにしました。(Agiristaは単価の安いアクリルだと思っていた)
 実際にDMMの3Dプリントサービスに自分で設計したデータを投げつけたところ、Agiristaで作ろうとしていたデータに厚みが足らない部分があるために作成できないとの連絡が届き、結局設計変更を行い事なきを得ました。

4.足らない強度と精度


できた部品。
届いた部品を嬉々として組み立てたが...

 数日後、部品が届いたので試しに組んでみることにしたのですが、届いた部品を見て絶句しました。あまりにも小さすぎたのです。
 これは決してDMMのせいではなく(むしろほぼ設計通り)、完全に設計段階で本当のサイズを確認していなかった私のせいでした。
 実際に組んでみたのですが、当然思ったとおりには動作しませんでした(小さく作りすぎたため、強度も精度も足らない)。

数万円のお小遣いがゴミに変わった瞬間でした。

5.再設計


再設計は辛いよ...

 ガラクタを作った事実に直面した次の日から、再設計を始めました。この時には、いろいろ妥協して既製品を使うことにしたのですが、またいろいろありました(その辺は再設計編で)。

6.次回予告

 URLのまとめは初回投稿にあるので、よかったらどうぞ。また、テクニカルな面の解説は別にしようと思っています。こちらは少々お待ちください...





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2020年4月13日月曜日

卒業制作(改め入学制作)(現在進行形)




 大学院に進学したものの授業開始が5月になり、就活がリアルに終活になりそうな中の人です。今回はかねてからやってはいたものの、あまり表に出してこなかった、卒業制作(改め入学制作)の話です。



1.卒業(入学)制作までの経緯


現状の"名称未設定"君。いい名前を考えてほしい。

 大学に入ってから、あまり"自分の作りたいものを作る"ことができていなかったのと、卒業研究からの逃避場所を設ける観点から、何となくCADをいじり始めたのが最初です。作るものに関しても完全に何となくで自動運転の車に決めました。

2.仕様について


ユニットごとにばらしたところ。

 仕様を固め始めたあたりにM5StickVを塩漬けにしていたことを思い出し、これを使うことに決めました。せっかくなのでいくつか試すことにしました。
  • サスペンション、デフ、ステアリングを盛り込む
  • 昇圧IC、モータの電流検知、LiPo充放電回路の搭載
  • テレメトリシステム、DeepLearningによる画像処理(Semantic Segmentation)
 ざっと書くとこの辺でしょうか。(本当はFPGAの小さいヤツを積んで、デジタルセンサのハブを作るとかも考えていました。)
 すべてにおいて専門外の中の人がやるにはとてつもなく酷野心的ではありますが、とりあえずやってみました。

3.ページまとめと次回予告


  1. 作り始めた経緯(今回)
  2. 0からごみを生み出す!素人機械設計 入門
  3. 素人でもわかる!"回 路 設 計"におけるリスケジューリング
  4. 0からごみを生み出す!素人機械設計 あげいん
  5. 基 板 が 届 か な い
  6. M5StickV触ってみた
  7. (M5StickVでセマンティックセグメンテーション)
  8. (基 板 実 装)
  9. (回路設計あげいんにならないといいな)
  10. (ESP32でテレメトリ)
  11. (動け、"名称未設定"君)
()の中身は現在進行中or予定です。おそらくうまくいかないので、あてにしないでください。

次回は、"0からごみを生み出す!素人機械設計 入門"です。次の更新はいつになるのか...


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2020年3月26日木曜日

kmodel v4 tips




 ここ最近はFPGAに全く触れていない中の人です。kmodel v4の実装で詰まったところがあったので、まとめておきます。


1.KPUのメモリとモデル圧縮


推定されるKPUのメモリ空間の割り当て(中の人の想像)。
コンパイル時にWeightsとDataの境界を決定しているらしい。

NNCaseでは、KPUのメモリ空間を6MBのメインメモリと2MBの入出力データ用メモリに分けており、重みやバイアス、中間生成データはメインメモリに載せているようです。
 このため、大きなモデルを載せるためにはメインメモリ側と入出力専用メモリ側の両方でモデルを圧縮する必要があります。今回作成したモデルの場合、入出力専用メモリは足りるのですが、メインメモリ側でサイズ超過が発生しました。

1-1.カーネルサイズ、チャンネル数


 CNN系のレイヤでは、カーネルサイズと入出力のチャンネル数が重みパラメータ数を決めるのですが、大半のモデルでは チャンネル数 >> カーネルサイズなので、チャンネル数削減の方がよりモデルの圧縮に効いてくるようです。

1-2.レイヤ数


レイヤ数の削減は、パラメータ数の削減以外にもネットワーク全体の高速化に効いてきます。ですが精度を落ちてしまうのでそこのバランスはしっかり見ておく必要があります(チャンネル数の削減も同じ)。

1-3.入力データサイズ


 中間生成データの削減には、入力データのサイズを落とすことも有効です。入力のサイズを落とすことで、レイヤ通過後の中間生成データも小さくしようというわけです。


 NNCaseの仕様的にパラメータを載せる領域と中間生成データを載せる領域も分けているようです。中間生成データ領域の量は、モデル内で最も中間データが大きくなった時の値で固定なので、ここを小さくするのが最も効果的でした。

2.アクセラレーション


 完全な形でKPUのアクセラレーションをしようとした場合、いくつかの制限があります。
  • 各レイヤの入力フィーチャーマップが320x240以下かつ出力フィーチャーマップが4x4
  • どの辺も同じパディング幅であること
  • Conv2DやDepthwiseConv2Dのカーネルサイズは1x1または3x3、かつストライド幅が1または2
  • MaxpoolとAveragepoolは2x2または4x4
  • 要素ごとの活性化関数がReLU, ReLU6, LeakyRelu, Sigmoidで、PReLUは未対応(FAQ上だと使える関数に...ってなってたけど、実際はよくわからん)
 部分的なアクセラレーションになるのは

  • 畳み込み系のレイヤで非対称なパディング、パディングされていない場合
  • ストライドが1、2以外(KPUConv2D+StrideSliceに置き換え)
  • MatMul(Pad(to 4x4)+KPUConv2D(1x1kernel)+Crop(to 1x1)に置き換え)->Beta 3でKPU matmulが追加されたので、もしかしたら専用の命令に置き換わってるかも。
  • TransposeConv2D(SpaceToBatch+KPUConv2D+BatchToSpaceに置き換え)
らしいです。これ以外にも置き換えはあるかもしれないのですが、公開はされていないです(NNCaseのオプションに--dump-irをつければレイヤの変換過程が見られる)。
意外とFakeKPUConv2DとかIgnoreが多かったです。

参考:https://github.com/kendryte/nncase/blob/master/docs/FAQ_EN.md

3.入出力データの扱い


この辺は情報が特に出回っていないので、苦労しました。

3-1.データの正規化


 トレーニング時に入力データの正規化を行いますが、M5StickV上で動かすことを考えると[0, 1]に正規化したほうが扱いやすかったです。どうやらNNCaseが勝手に、画像データの入力の場合は[0, 1]に正規化しているようです。[0, 255]とかでもやったのですが、うまくいかなかったです。

3-2.出力データフォーマット


 入力が画像の場合、image.Image()にすればいいので問題ないのですが、出力は画像出力でも1次元のtupleなので変換する必要があります。いろいろ探した結果、NCHWだったことが判明し、実際に変換してみても同じだったので安心しました。
 ただ、tuple->Imageの変換の際には、画素ごとに色を割り当てたいのでNCHWよりもNHWCの方がより便利です。NNCaseのオプションで変えられればいいのですが。

4.その他

4-1.Maix_Toolbox


 Maix_Toolboxにはtflite2kmodel.shという変換用のshellスクリプトが用意されています。中身はNNCaseでコンパイルを実行しているだけなのですが、コンパイルオプションから推定するとNNCase V0.1.0向けであることがわかります。
 なので、NNCase V0.2.0系を入れてしまうと動かなくなります。また、V0.1.0は対応するレイヤが少ないので、個人的にはV0.2.0をお勧めします。

参考:

4-2.Beta2とBeta3


 いつの間にやらNNCase v0.2.0 Beta3がリリースされたようなので、そちらのテストをしました。
 コンパイルのオプションは、Beta 2で使えたものはすべて使えました。Beta 3で追加されたオプションはあるかどうかがわかりませんでした。
 コンパイル結果を見ると、同じモデルでもBeta3の方がメインメモリの使用量が増えているようです。また、"Optimize Pass 3"という工程が増えていました。実行速度はあまり変わっていませんでした。もう少しコンパイラの気持ちになってモデルを作れば、速くなるかもしれません。

4-2(2020/5/21追記).Beta4


 Beta3が出たと思ったら,NNCase v0.2.0 Beta4がリリースされたようなので、そちらのテストをしました。
 リリースの内容を見ると,オプションとして,--weights-quantize-threshold,--output-quantize-threshold,--no-quantized-binaryが追加されているようです.(実は,--dump-weights-rangeなんていうオプションも追加されてる)
量子化周りの設定のようで,しきい値の設定をできるようです.(後でいろいろ書きます.)
 出力されるモデルサイズはBeta3とBeta4で違いはないようです.オプション次第で変わるかもしれないです.

4-3.ファームウェア


カスタムファームウェアの_boot.pyをいじった。
中央右の得体のしれないものは猫。

 フラッシュに焼く際に、モデルが大きすぎると載せられない問題が発生します。その対策として、自分でファームウェアをビルドする方法があります。


 やり方は、上のURLを参考にしてもらうとして、私の場合は_threadとulab、MaixPy IDEのみを有効化し、あとは無効化しました。


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2020年3月21日土曜日

NNCase on Windows 10



 NNCaseのV0.2.0がWindows 10に対応しているとのことなので、使ってみました。
"tf.kerasの自作モデルをNNCase  v0.2.0 (kmodel V4)に対応させ、M5StickV(K210)上で動かす(2)" のWindows 10版だと思ってください。





2-1.NNCaseのダウンロード


 今回使用する kmodel V4に対応するNNCaseはV0.2.0以降なので、最新版(2020/3/16現在)であるNNCase v0.2.0 から各OS版の圧縮ファイルをダウンロードします。Windows 10の場合は、ncc_win_x86_64.zip を選択しましょう、

2-2.NNCaseのインストール(?)

 落としてきたファイルをどこでもいいので解凍します。解凍した中にncc.exeが存在するはずです。
 このexeファイルをトレーニング済みの.tfliteがあるフォルダに投げ込みましょう。これでインストール(?)は終わりです。

2-3.コンパイルオプション

2-4.コンパイルの例

 コンパイル例です。


.\ncc.exe compile Model.tflite Model.kmodel -i tflite -o kmodel --dataset ./Img/ -- dataset-format image --inference-type uint8 --input-mean 0 --input-std 1 --dump-ir --input-type uint8 --max-allocator-solve-secs 120 --calibrate-method l2

 中の人は、PowerShellで動作確認しました。

2-5.その他

 一応動いたので、よし。
 (Macを持っていないので、そちらの動作確認はほかの方に投げたい所存です。)


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NNCase 記事まとめ




 NNCaseの記事のまとめです。


tf.kerasの自作モデルをNNCase v0.2.0 (kmodel V4)に対応させ、M5StickV(K210)上で動かす


kmodelを作るときのtips


セマンティックセグメンテーションやってみた


NNCase V1.7を試す




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